意地悪なキミと恋をします。
話を紛らわそうと辺りを見回すと、ちょうど目当ての雑貨屋さんに着いた。
「わぁ!可愛い。これも可愛い!きゃー!」
「女の子ってこんなの好きだよね〜」
男の俺には全部一緒に見えるよ〜と言いながら、優希先輩はちょうど自分の目の前にあった猫のストラップを手にとる。
「それ!欲しかったやつです!ぜひ見せてください!」
手を器の形にして待っていると、優希先輩はしばらくストラップを眺めてから私のほうを向いてニコッと笑った。
「やだ」
グサッ!
恋のキューピットかしら。
初めて見た先輩の意地悪な笑顔にドクンと心臓がはねた。
「…せ、先輩の意地悪!」
「そういえばこれ妹が欲しがっててさぁ、もうすぐ誕生日なんだよね〜」
そ、そんな!猫ちゃんのやつは最後の一つなのに!
うーん、でも、それは仕方ないなぁ。
「じゃあ、喜んで妹さんに譲ります!」
とは言いつつも、あまりのショックさに意気消沈した私は、雑貨屋の前のベンチに腰掛ける。
まぁ、優希先輩の妹さんのためだし、優希先輩のあんな笑顔見られたから、許せちゃうもんねぇ〜。
「えへへへー」
「おねーさん、ひとりー?」
でた!定番のナンパ野郎!
シルバーの髪に、何個も空いてるピアス。
まぁ顔は悪くないかな。
でも、
「いえ、デート中なんで、お構いなく!」
「でも、彼女ほったらかしにするような彼氏ほっといてさぁ、俺とあーそぼ!」
「や、たぶんあなたよりかっこいいんで目移りする気ありません」
「おねーさん、言うねぇ。気に入った!もう連れ去っちゃう!」
そう言うと腕を掴まれ、キラキラの笑顔で行こっと言われる。
まぁグイグイ無理やり行こうとしないだけましだけど。
でもこんなとこ優希先輩に見られるわけにはいかない私はくいっと逆に手を引っ張って、少し小声で話しかける。
「ここだけの話、私実は……レズなんです…」
「え!!!?ご、ごめん!」
ナンパの彼は飛び退いて私に向かって手のひらを合わせる。
「いや、大丈夫ですよ!まぁ、そういうことなんで…」
そそくさともう一度雑貨屋に入ろうとすると、
「なーにがレズなんですだよ」
聞き慣れた…いや、もう毎日のように聞かされている声の主が現れた。