意地悪なキミと恋をします。
「ね〜〜、かいとぉ〜〜。でーとしよぉよ〜」
「いや、それは、ちょっと勘弁…」
「え〜、じゃあ愛!愛!傘して帰ろぉ〜」
すると少し間が空き、
「それならいいけど」
あ、あいつ絶対傘忘れたな。
せこっ!!
私が自分の靴箱に着く頃には、海斗達はもう門に向かっていて、雨でぼやけた2つの後ろ姿が目に入った。
あ、腕くんでる…。
「莉奈ちゃん!おまたせ!」
深く考える前に優希先輩が到着して、私たちも家路に着いた。
「やっと莉奈ちゃんと喋れるよ!」
朝は考え事してたしねぇっと笑う。
すいません、先輩との時間なのに…。
「もうそのことは解決しました!なので、たっくさん喋りましょう!」
「喋りましょ〜!」
それからいつも通りに楽しく話して帰っていると、周りには誰もいない道で、さっき消えたはずの2人の姿があった。
「うわ、大胆…」
優希先輩はその姿を見て一言。
たしかに、大胆…。
こんな道のど真ん中でキスしてるなんて。
さっきは深く考えなかった心の小さなモヤモヤが顔を出した。
「……したくせに…」
「なんて?莉奈ちゃん」
『私にキスしたくせに』
この言葉で頭がいっぱいになった。
「…なーんか気まずいよねー。あ!今日は遠回りしてケーキでも食べて帰ろうか!」
そう言って私の手を取り、来た道に踵を返した。
「…莉奈!!」
と、その瞬間、私のもう片方の腕が取られ、
振り返るとさっきまで少し離れたところにいたはずの海斗がすぐ目の前にいた。
「え、ど、どうしたの?海斗…」
さっきまで雨に降られるの嫌そうだったのに、傘なんてそっちのけで。
「あいつから、無理やりしてきただけだから」
「し、しらない!私関係ないし!」
「それだけ、伝えときたくて」
あーもう!なんなのよ!なんなのよ!
頭ごっちゃになるっつーの!
「莉奈ちゃん?この子、この前の子だよね?」
そうだ…ショッピングモールで優希先輩と海斗1回会ってるんだ。
「莉奈ちゃんに何の用?それだけ言いに来たの?だったらもうその手放してとっとと帰ったら?」
優希先輩ってばまた不機嫌になっちゃった〜!
「変な勘違いさせたくないだけっす」
「別に勘違いしたって、莉奈ちゃんには関係ないだろ」
きゃ〜。
2人の間に見えない火花が私には見えるよ〜。
ってゆーか、さっきの女の子も帰っちゃってるし!
「関係大アリっすよ」
いや、ないない!
ないからそんな挑発するような笑い方すんな!
「へぇ〜。別にクラスの子にバラすような子じゃないけど、それ以外でなんかあるわけ?」
優希先輩って…こんな見た目の怖そうな海斗に対して、意外と根性あるってゆーか、海斗と話してる時の先輩は迫力ありすぎ!!
「俺、こいつ先輩から奪う気なんで」
言いやがった〜。
もう〜!そんな堂々と言うもん!?普通!
「誰から奪うって?莉奈は渡さないから」
突然の呼び捨てにキュンとなりながら、今の状況的にそれどころじゃないと思い直して、2人を止めにかかる。