意地悪なキミと恋をします。
個室の外で数人の女の子の足音と、愛莉の声が聞こえた。
パッと個室を開けると、愛莉が私を後ろにかくす。
「あなた皐月さんのお友達の横山さん?皐月さんに用があるんだけど…」
「何の用?」
いつにも増して冷たい愛莉の声。
「ちょっと退いてくれる?皐月さんに用があるっていってるじゃない」
「あんた達だってそんな大勢でなんなのよ。用があるのはあんたでしょ、そんなぞろぞろ連れてくるくらいなんだから、あたしがいてもよくない?」
「っ…!…まぁいいわ。皐月さん、あなた二股してるって本当?しかも、学校のアイドルの島田先輩と海斗くんって…」
なんで私が二股なんかしなきゃならないのよ!
「違う!二股なんて…
「するわけないじゃん。第一、してたからって、あんたらに関係あんの?あんた達2人のなんなの?」
私の言葉を遮って、愛莉が庇ってくれる。
「あなたに聞いてないって言ってるじゃない!」
「本当のこと言っただけだけど?なに?島田先輩はみんなのものだから〜とか言うわけ?選ばれないから誰にも取られないようにそう言ってるだけじゃん」
とんでもなく挑発のセリフを言い切って、ふっと鼻で笑う。
「黙りなさい!!」
さすがに怒った女の子は今にも殴りかかりそうで。
「危ない!!」
パチン!!
さすがに愛莉が殴られるのは違うからね…
「莉奈!」
いたた〜。
間一髪で飛び出せたおかげで愛莉は殴られずに済んだ。
「い、いい気味よ!行きましょ!」
カッとなってしてしまったことに驚いたのか、女の子は仲間に呼びかけてトイレを出て行こうとした。
したんだけど、
「あんたらなにやってんの?」
タイミング悪すぎでしょ…。
「な、那月くん…」
扉を開けた瞬間固まる女の子達。
そこにはすごく怒った海斗がいたからだ。
「なにやってんのって聞いてんだけど」
「さ、皐月さんがっ、那月くんを弄んでるって聞いたから…!」
「んー、で?それ、あんたらに関係あんの?」
「だって、私達…那月くんのファンだから…」
おどおどしている女の子にはさっきまでの気迫は欠片もない。
「ファンだからなに?ファンだったら俺の好きな女殴ってもいいわけ?…ふざけんなよ」
「ご、ごめんなさい。もうしません」
それだけ言うと女の子達は走って帰っていった。
「ったく。殴られてんじゃねーよ」
乱暴な言い方だけど、顔はすごく心配してくれてて、私の頬を触れる手も優しい。
「赤くなってんじゃん。保健室行くぞ…って、そっちの横山は大丈夫?」
「……那月くんががんばってるのは知ってるけど、自分のファンのことも考えてもう少し配慮しないと莉奈がこんな目に合う」
すると海斗は気まずそうな顔をして。
「悪い、さっき学校着いた時、昨日の女が来て、様子が変だったから聞き出した」