意地悪なキミと恋をします。


放課後、


学校での噂も消えてないだろうし、なんだか誰とも顔を合わせたくなくて、保健室で時間をずらして誰もいない時間に帰ることにした。



「私、迷走しすぎじゃん」



薄く赤みがかかっている空を見上げると、何もかも忘れられる気がして、ぽーっとしばらくの間プチ現実逃避。



私は優希先輩が好き。


ずっと憧れてて、奇跡的に付き合えたんだし、これ以上の幸せなんてないよね。


なのに、いつも頭のどこかにいる男の子。


ムカつくことしか言わないのに、なんでだか、たまに見せる優しさに胸が高鳴る男の子。


時折、無邪気な笑顔を向ける男の子。






「っ、ぶねー」




ぶつかったその人は、見覚えのある姿カッコ。





「んだよ、莉奈かよ」




「雅人……」




私の目の前にはさっきまで浮かんでいた海斗の笑顔をかき消して、大嫌いな雅人の顔があった。




「んだよ、ぶつかっといてそんな顔してんじゃねーよ、ちゃんと前見ろよノロマ」



「あ……え、と…ご、ごめん」



「ったく、ほんとお前は俺の邪魔しかしねーよな」




次々と浴びせられる棘のある言葉に、嫌でも昔のことを思い出してしまう。




『浮気したくらいで騒いでんじゃねーよ、嫌なら浮気されないような女になれよ』


『あー、うぜー。顔も見たくねー。ちょっと消えててくんね?』





嫌でも、涙がこぼれてしまう。




< 31 / 32 >

この作品をシェア

pagetop