意地悪なキミと恋をします。
どうして貴方は
「な、何泣いてんだよっ、悪かったって、莉奈」
初めて掛けられた雅人からの気遣いの言葉。
「っ、さ、触らないで!」
そっと涙を拭う雅人の手を思いっきりはらってしまった。
何も言わず切なそうな顔をする雅人を見て、今までずっと溜め込んでいた想いが溢れる。
「っ、なんで!?なんで浮気なんて!…どうして雅人は、私と付き合ってたの?なんで今更優しくなんてするの?わたし、なんにも、わかんないよ…雅人がわかんない…」
「……莉奈」
「私の事、好きだった?私の事悲しませて楽しかった?私なんていてもいなくても……」
「好きだった、てゆーか今も好き」
「っ、!?」
あまりの驚きに泣きじゃくるのも忘れて雅人の顔をばっと見たまま固まった。
「ごめん、勝手な事言ってるのはわかってるけど、俺は莉奈が好き。離れられて当然の事をしたけど、莉奈が離れて行って壊れそうだった」
俺って弱いんだよな、そう呟くとゆっくりと帰る方向に歩き出した。
自然とつられて後ろを歩く。
「……ごめんな、莉奈。俺こんなだけどとんでもなく小心者でさ。だから許されるわけじゃねーけど、莉奈が離れて行きそうでいつも怖かった」
「……」
「周りの奴らも莉奈の事可愛いって言ってたし、そのくせプライド高いから俺の女だって独占欲丸出しにできなかったし、余裕ぶる事しかできなかった。本当は不安で仕方なかったくせに……」
「その不安に耐えきれなくなった結果が浮気ってわけ。情けねーよな」
前を向いたまま、ハハっと乾いた笑いを浮かべると、私に向き直って、
「それでも離れて行かない莉奈に、どんどんのめり込んで行った。どんどん不安になって、もう負の連鎖から抜け出せなくなってた」
私の知らない雅人はこんなにも弱くて、しっかりと雅人の顔を見るとその顔は今にも崩れそうで。
もしかしたらこの話も全て、嘘かもしれない。
でも、こんなにも私を愛しむように見つめる瞳に嘘はないと思った。
「……莉奈、ごめん。別れるって言われて、本当にひどい事したって改めて気づいた。なのにそれ以上に壊れそうな自分を守る事しかできなくて、1番大切なはずの人を追いかけて、謝る事すら出来なかった…本当に……、っ!?」