意地悪なキミと恋をします。
いきなり私の視界に入ってきた男は、なんだか見たことあるような、ないような、同じ制服を着ていた。
「うーんと、こんなとこでつったって、どうしたの?同じ学校だよね?何年生?」
なにも答えない私に、綺麗な顔が少し困った顔をしたけれど、彼はキラキラした笑顔で私に問いかける。
な、なにこの綺麗な人…
見たことあるけど…うーーーん。
「あ!俺?俺は島田優希!3年だけど、きみは?」
そこでようやく思い出した。
「あっ!島田って人!」
聞いたことある!クラスの子がみんな騒いでる3年生のアイドル先輩だ!!
「ははっ、島田って人ってひどいなー」
私ったらなんて失言を…!
「す、すいません!私は2年の皐月莉奈って言います!こんなとこで立ち尽くして邪魔でしたね…すいません!!」
「いやー、それは別にいいんだけど…」
と島田先輩は一瞬考える素振りを見せると、スッと私の頬に触れた。
私は反射的に一歩後ずさる。
「あー、ごめん!でも…きみ泣いてたし、すっごく悲しそうな顔、してたから」
「えっ」
うそ!気づいてなかった!
なにやってんだろ〜〜〜。
恥ずかしいっ!
「なにかあったの?ひどいこと言われた?俺でよければ聞くけど」
「いえ!いえいえいえ!恐れ多いです!」
すると島田先輩はクスッと笑って、その顔がすっごくかっこよくて、綺麗で、思わず見惚れた。
「大丈夫?顔、少し赤いけど…」
「あっ!ぜっんぜん!大丈夫です!平熱です!なんなら平熱35度台です!」
空元気に見えるかもしれないけど、思いっきりニカっと笑って答えると、
「元気になったみたいで良かった。莉奈ちゃんって呼んでいい?俺のことも優希でいいから!」
こくこくこくっと思いっきり首を縦にふる。
「なんか、後ろから見たら怖そうだったけど、きみ喋ると面白いね」
こ、こわそう!?
そんな風に見られてるんだ!
「…じゃあ俺、行くね!学校の中では逆にきみに迷惑かけるかもしれないから話しかけられないけど…見かけたらまた声掛けてね!またね、莉奈ちゃん!」
「は、はい!……あのっ、ゆ、ゆうき…先輩っ!ありがとうございました!」
私の言葉を聞くと歩き出していた先輩は、くるっと顔だけ向けて、手を上げてくれた。
「優希、先輩」
頭から離れない、太陽に照らされたキラキラした笑顔を残して。