片道のRe:
「よし、5つ順位を上げた。あと1分もすればくるぞ」

「はい」


私はスタートラインに立ち、第二走者の到着を待つ。

目の前では、既に上位チームのたすき渡しが始まっている。


「ワカ、ファイトー!」
「野々山、ファイトー!」


奮い立つ私の横では、リノや男子メンバー数人がエールを送ってくれている。

しかしそこに、望んだ人の姿はない。


「――きた!」


だからと言って、頑張らない理由にはならない。

第二走者の1年生が、顔をくしゃくしゃにし、たすきを強く握り締めてやってくる。

あと10m、

5m、

1m――……!


「お願いします!」
「ナイスファイト!」


私はその子の肩をポンと叩き、託された思いを背負った。

最初に大きく息を吸い、リズムを取りながら一歩、一歩を踏み締める。


私は晴れ女なのだろう。

視界いっぱいに広がるのは、今日も嫌味なほどに青い空。
前を行くカラフルな背中がキラキラと光って、目に痛い。

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