片道のRe:
いつかと同じ、私は前を行く背中を必死に追いかけた。

けれど次第に映る背中は大きくなり、遂には追いつき、私はその横を過ぎて行く。

一人、また一人。

秋の空気はクリアで気持ちがいい。
自分でも不思議なほどに身体が軽い。

そしてまた一人。

合計で3つ。赤と黄と紺の背中を越えていった。


それでも地面を蹴る毎に、脚には鉛が積もっていく。
腕を振る毎に、息は切れて細くなり、気持ちだけが、前へ前へと伸びていく。


残り500m、酸素が薄れて視界が濁り始める頃。
私は最後の力を振り絞り、顔を上げた。

その、視界の右端に。


「野々山、ファイトー!!」


それはほんの一瞬の出来事。

視界は既に、霧の中だったけれど。

もう、どこまででも走れる気がした。

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