片道のRe:
「おい」

「だから何」

「手出せ」

「は?」

「早くしろ」


訳が分からぬまま手のひらを差し出すと、オグは大股でこちらへやって来る。


「タケト先輩から」


そうぶっきらぼうに言い放ち、手のひらにポン、と何かを置いた。


「部活頑張れ、だってよ」


視線を落とし、手の中でコロンと転がるそれを見つめた。


白のアクリルに黒で掘られた、大好きな人の、大好きな名前。

“城崎岳人”
先輩と3年間を共にした、唯一無二の名札だった。


「……オグ」

「あ?」

「……あっ、あり、ありが……」

「だーもー泣くなキモい」

「ありッ、ありがとう……ッ!」


オグの前で泣くだなんて、有り得ない。
けれど涙は溢れて、止まらない。

名札を握り締めた拳には、ポタポタと無数の水玉模様が浮かび上がる。

体育座りのまま暫く泣き、「いつまで泣いてんだよ」とオグに頭をひっぱたかれて、私はようやく顔を上げた。

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