片道のRe:
5月。
私はソフトテニス部に入部した。

初めて知る女の縦社会というものは、特に新入りに厳しいらしい。

1年はコートに入れてもらえず、延々とボール拾いをさせられる日々が続く。


しかし何よりも納得出来ないのは、外見ついて特に五月蝿く言われることだ。

ジャージの胸元のファスナーは全部閉めなくてはいけないだとか、靴下はハイソックスしか認めないだとか、眉毛は整えたらいけないだとか。
先輩様には少しも迷惑を掛けないのにと、理不尽さが可愛くしたいと思う気持ちに跳ね返り、余計に不満は大きく募る。


せっかく憧れの中学生になれたのに。
そんな風に思いながらも、否応なしに従っていた。


浮き立つ空気も、地に着き始めたある日。

カラカラと鳴る筆記用具とスケッチブックを胸に抱え、私は美術室を目指して階段を上る。

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