★MyHomeの秘密★♪
凌兄ファンはまだ生息していたのか……。
名前を聞いただけで…あたしの心臓が変にズキズキと痛む。
「…――わかんない…」
もう、来ないことは分かっているのに、その言葉が出せなかった。
『じゃあ今度聞いてみてよ!』
無理…。
だって凌兄は引越しして、一人暮らしするんだから。
わざわざ、高校に来るとも思えない。
そんな必要すら、ない。
「………うん」
彼女達は満足そうに去っていく。
それに比べあたしは…
胸の奥が、ぽっかり開いた気分だった。
いつも、食卓にはみんなが揃っていて。
無駄な雑談をしながら食べる食事は楽しかった。
だけど…最近は凌兄が欠けることが多くなった。
“引越しの荷造り”
そういって、最近姿すらもあまり見かけなくなった。
同じ家にいるはずなのに…。
最後に会話をしてから、何日何週間、話していないんだろう。
食事のときに空いた席を眺めると、寂しさが込み上げ、胸がズキンとする。
凌兄が引越したら…これが当たり前になるのだと、実感する度に空虚感は広がり――…涙は出なかった。
一つの想いがあたしの中を占めていた…。
でも、その言葉をいう勇気があたしにはなかった。