今日はバレンタイン
後半
「あそこの喫茶店、俺スキなんですよ。入りません?」
と言われて、早く帰りたいワタシはやんわり断ろうとしたけれど、
「あの店のチーズケーキ安くて美味しいんですよ。おごります」
とか言われたら。
「おおおおーいしーい」
「でしょう」
おごられるしかありません。甘いもの大好き。
「野原さん、今日バレンタインのチョコあげる人いないんですか?」
「なんですか急に。失礼な」
「あああ、すいませんつい。」
つい、ってなんだ。まあいいけど。
と、一旦チーズケーキから目を外してセットでついてきた紅茶で心を落ちつせる。はあ紅茶もおいしい。この喫茶店、ワタシも好きになりそうだ。
「彼氏なんていませんよー。今年だって、バイトの人たちから言われなかったら今日ブラウニー作ろうとしてないですからね」
「そうなんですか?」
「だってお菓子作りってすごく面倒くさい」
「へー、そうなんですか」
「そりゃいつももらう側な片谷さんは…」
「ははは」
片谷さん、苦笑い。ちょっと失礼なこと言っちゃったかな。
「片谷さんは女の子とデートじゃなかったら、どうして今日は服着て外に?」
「俺がいつも服着てないみたいなそんな」
「ジャージとか運動着みたいなん多いですけど」
「まあ確かに」
「今日はカッコイイですね」
思わず場を取り繕うために発言した言葉だったが、
「ああ…えーと」
照れる片谷さん。
ワタシの馬鹿野郎!
またまた苦笑いをする目の前の片谷さんを見て、自分が失敗したのを悟った。
ワタシたちの間に無縁のはずの、こそばゆい空気が!!
結局、少しの沈黙により空気は浄化されて。
「片谷さんが珍しく服を着ているにしても、人間だれしも秘密の一つや二つくらいありますからね大丈夫です。今日会ったことは秘密にしときます」
「…いや…あの、」
「いえいえそんな心配しないでください、今日のことは誰にも言いません忘れますよ」
「…」
「…」
どうやら必死に取り繕った結果、再び沈黙の空気が。非常に気まずい。
「はあ…」
やっぱりバイトでしか会わないような人と、喫茶店とかムリだな。
とか自分の社交性の低さに思わずため息が出た。
早く帰ろうと残りの片谷さんオススメのチーズケーキと紅茶に手をつける。
そして自分の分のケーキセットを片付け終わった。その間、片谷さんは微動だにしなかった。
そんなに困らせちゃったかなあ。
と彼に申し訳なく思いながら、
「じゃあワタシ、チョコ作らなきゃいけないんで、そろそろ帰ります」
と言って、自分のケーキセットの値段500円を置いてワタシは席を立った。
さすがにこの空気で図々しく、奢ってくれてアリガトウゴザイマス、と帰れない。
「待ってください、野原さん」
腕をつかまれた。
思わずワタシは、固まって片谷さんの顔を見下ろした。彼は毛穴のない頬を染めながら、真剣な顔で、
「今日は野原さんに会いたくて、外に出てました」
爆弾投下してきた。
「…はい?」
「今日、野原さんの誕生日ですよね?だからプレゼントを用意したんです。でも、俺も野原さんも今日はバイト入ってないから会えないし…」
だから外に出たら、野原さんと会えないかなと思って…ほら家近いし…と照れ笑いする片谷さんを見ながらワタシは彼と同様に顔が赤くなっていってるんだろうなあ、と思った。
てか、なにこのフラグたった感じ。
「好きです、付き合ってください」
「いやです。なんか怖いですいろいろと」
そんなこんなで片谷さんの言葉をノラリクラリとかわし続けて一ヶ月後に捕まってしまうのだが、それはまた別の話。
確かに2月14日はワタシの誕生日で、彼が用意してくれていたプレゼントは寒がりなワタシを見通して、お洒落な電気カイロ。嬉しい。それと彼の手作りチョコケーキ。誕生日のついでに、バレンタインだったんでチョコにしましたと、笑った彼の家がオススメチーズケーキの喫茶店だったことにも驚いたのだが、その店の菓子類は全部毎日、彼が手作りしているらしいことにも驚いた。お菓子もらう側じゃなかったよ。
そんな彼にちゃんと心を込めて、義理じゃない彼だけの、手の込んだお菓子をホワイトデーに送ったら本当に泣いて喜ばれた。
おわり
と言われて、早く帰りたいワタシはやんわり断ろうとしたけれど、
「あの店のチーズケーキ安くて美味しいんですよ。おごります」
とか言われたら。
「おおおおーいしーい」
「でしょう」
おごられるしかありません。甘いもの大好き。
「野原さん、今日バレンタインのチョコあげる人いないんですか?」
「なんですか急に。失礼な」
「あああ、すいませんつい。」
つい、ってなんだ。まあいいけど。
と、一旦チーズケーキから目を外してセットでついてきた紅茶で心を落ちつせる。はあ紅茶もおいしい。この喫茶店、ワタシも好きになりそうだ。
「彼氏なんていませんよー。今年だって、バイトの人たちから言われなかったら今日ブラウニー作ろうとしてないですからね」
「そうなんですか?」
「だってお菓子作りってすごく面倒くさい」
「へー、そうなんですか」
「そりゃいつももらう側な片谷さんは…」
「ははは」
片谷さん、苦笑い。ちょっと失礼なこと言っちゃったかな。
「片谷さんは女の子とデートじゃなかったら、どうして今日は服着て外に?」
「俺がいつも服着てないみたいなそんな」
「ジャージとか運動着みたいなん多いですけど」
「まあ確かに」
「今日はカッコイイですね」
思わず場を取り繕うために発言した言葉だったが、
「ああ…えーと」
照れる片谷さん。
ワタシの馬鹿野郎!
またまた苦笑いをする目の前の片谷さんを見て、自分が失敗したのを悟った。
ワタシたちの間に無縁のはずの、こそばゆい空気が!!
結局、少しの沈黙により空気は浄化されて。
「片谷さんが珍しく服を着ているにしても、人間だれしも秘密の一つや二つくらいありますからね大丈夫です。今日会ったことは秘密にしときます」
「…いや…あの、」
「いえいえそんな心配しないでください、今日のことは誰にも言いません忘れますよ」
「…」
「…」
どうやら必死に取り繕った結果、再び沈黙の空気が。非常に気まずい。
「はあ…」
やっぱりバイトでしか会わないような人と、喫茶店とかムリだな。
とか自分の社交性の低さに思わずため息が出た。
早く帰ろうと残りの片谷さんオススメのチーズケーキと紅茶に手をつける。
そして自分の分のケーキセットを片付け終わった。その間、片谷さんは微動だにしなかった。
そんなに困らせちゃったかなあ。
と彼に申し訳なく思いながら、
「じゃあワタシ、チョコ作らなきゃいけないんで、そろそろ帰ります」
と言って、自分のケーキセットの値段500円を置いてワタシは席を立った。
さすがにこの空気で図々しく、奢ってくれてアリガトウゴザイマス、と帰れない。
「待ってください、野原さん」
腕をつかまれた。
思わずワタシは、固まって片谷さんの顔を見下ろした。彼は毛穴のない頬を染めながら、真剣な顔で、
「今日は野原さんに会いたくて、外に出てました」
爆弾投下してきた。
「…はい?」
「今日、野原さんの誕生日ですよね?だからプレゼントを用意したんです。でも、俺も野原さんも今日はバイト入ってないから会えないし…」
だから外に出たら、野原さんと会えないかなと思って…ほら家近いし…と照れ笑いする片谷さんを見ながらワタシは彼と同様に顔が赤くなっていってるんだろうなあ、と思った。
てか、なにこのフラグたった感じ。
「好きです、付き合ってください」
「いやです。なんか怖いですいろいろと」
そんなこんなで片谷さんの言葉をノラリクラリとかわし続けて一ヶ月後に捕まってしまうのだが、それはまた別の話。
確かに2月14日はワタシの誕生日で、彼が用意してくれていたプレゼントは寒がりなワタシを見通して、お洒落な電気カイロ。嬉しい。それと彼の手作りチョコケーキ。誕生日のついでに、バレンタインだったんでチョコにしましたと、笑った彼の家がオススメチーズケーキの喫茶店だったことにも驚いたのだが、その店の菓子類は全部毎日、彼が手作りしているらしいことにも驚いた。お菓子もらう側じゃなかったよ。
そんな彼にちゃんと心を込めて、義理じゃない彼だけの、手の込んだお菓子をホワイトデーに送ったら本当に泣いて喜ばれた。
おわり