掌
第ニ章 お菓子パーティー。
土曜日 午後7時
「真奈美ぃ〜!」
「歩遅刻だぞー」
ごめん、と手のひらを合わせながら、初めて来た駅のロータリーにいる真奈美の元へ、走っていく。
「あれ?健太君は?」
健太君と三人で、この駅で待ち合わせて、お菓子パーティーの開催地
池内君の家に行くのだ。
「あいつまだ来てないよ〜。健太がバイトだから、こんな遅くからやる事にしたのに…遅刻とか許せないよね!」
腕を組んでロータリーのベンチに座り、眉間にシワを寄せる真奈美は…
ワンピースが似合って可愛い。
「あっ歩ぃ〜そのスカート可愛い!買ったの?この日のために?」
真奈美が、ニヤニヤしながら、あたしのスカートをつまむ。
「別にこの日のためじゃないよ!」
嘘。
本当は昨日学校が終わった後、急いで服屋にかけこんだ。
いつも制服だから学校の外で会う時の私服は新鮮で、適当な服なんて着たら、一気に好感度は下がる。
池内君からの好感度を下げたくない。
なぜかそう思って財布を握りしめ、昨日は一時間くらい、服屋の中をうろついた。
「あっ健太!遅ーいっ!」
ごめんごめん、と笑顔で言いながら改札口から歩いてくる健太君は……私服は何度も見た事あるけど、やっぱり格好いい。
ただのTシャツ、ジーパンなのに、なんでこんなにオシャレに着こなせるんだろう…?
お世辞にも綺麗とはいえないこのロータリーで、真奈美と健太君は明らかに浮いてる。
…私は……?
「じゃ行くかぁ〜達也ん家。」
1人考え込むあたしを無視して、歩きだす。
二人のオシャレさに気兼ねして、あたしは少し後ろを歩いた。