掌
靴を脱いで上がると、雑誌や洗濯物で散らかったリビングと、部屋が2つあった。
俺の部屋こっち、と和室の部屋に通された。
8畳くらいの空間に、青色の布団がかぶさったベッドと、テレビと、小さなちゃぶ台。隅に追いやられている教科書の上には、漫画。
物が少なくてサッパリとした部屋が、池内君らしいとも思った。
「お父さんとお母さんは??夜遅いし挨拶したいな。」
健太君はベッドにダイブし、あたしは落ち着きなく、部屋をキョロキョロ見渡す。
真奈美だけが、池内君のお家の人に気を遣っていた。
真奈美は礼儀正しくて律儀で……
本当、できた娘だわ。
「父さんはいないし、母さんは基本的に仕事でいないからさ。気ぃ遣わなくていいよ〜。」
池内君は、台所から1Lのコーラとカルピスと4つのコップを軽々持ってきながら、笑って言った。
真奈美はそっか、と黙ったが、少し気まずい空気が流れる……。
池内君、お父さんいないんだ………。
お母さんも仕事なら、いつもこの家に一人ぼっちなの……?
池内君が、一人でこのベッドに座り、テレビを見ている姿が脳裏によぎった。
「………」
そんなの寂しいよ……。