掌
達也も上機嫌で、優しくって…
あたしは、つい怒らせてしまったんだ。
ううん、正直…怒るなんて思わなかった…。
「そういえば、この前の日曜日、ユキちゃんと遊んでね〜面白い事聞いたよ!」
この前の日曜日は、珍しくクラスの女の子と遊んだ。
その時の話をしようとしたら
達也が立ち止まった。
「日曜日……遊んだん?」
「え……え?」
戸惑うあたし。
「来い。」
達也の、あたしの手のひらを握る掌に、力が入った。
「痛い達也……」
さっきまで、優しくつないでくれていた掌は、固く…あたしの手のひらを握り潰すように持ち、あたしを引っ張って行く。
楽しいデートを
辛い思い出のデートへと姿を変えるために、達也の家へ連れていかれる。
あたしは、黙ってついていく。
よくある事だから……
逆らったりしたらもっと辛いから……