掌
第七章 別れ。
9月1日
「おはよ〜!」
「久しぶりぃ〜!」
むしむしとした暑さはまだ残るが、セミはもう少ない。今日から新学期。
髪を染めていたり、肌が焼けていたり、クラスのみんなは夏休みを楽しく満喫したみたい。
「歩おはよー。」
「おはよっ。」
みんなとは違う顔つきで教室に入ったあたしに、眩しい笑顔で挨拶してくるクラスメイト達。
元気よくおはよう言えたかな?ちゃんと、笑顔つくれてたかな?
夏休みの名残で騒がしい1組の中で、1人、朝から緊張するあたし。
達也と家族以外の人と会うのが久しぶりすぎて…言動がぎこちなくなってしまう。
席につくと、真奈美が寄ってきた。
「歩…おはよ。」
「おはよ…。」
あたし以外でもう1人、この明るい教室内で浮いている。
窓を開けて、遠くを見る真奈美の横顔には、影があった。
真奈美…痩せたね。
夏休み中に、何かあったの?健太君とは、うまくいってないの?
前までは、真奈美の事、何でも知ってたのに…今じゃ、知らない事だらけだ。
どこか寂しい。
真奈美も、こんな気持ちだったのかな………。
「……」
「……」
でも、あれから会ってなかったあたし達は、重い空気をまとっていた。
それに、いくら怒ってたからって、真奈美に言った事はひどい事って…時間が経つにつれ自覚したから、どんな顔して真奈美と話せばいいのかまったく分からなかった。
意味もなく、机の上に変な落書きをする事で、重い空気にあたしは必死に耐えてた。
そんな時、ユキちゃんが助け船。
「歩!真奈美!今夜クラス会あるんだけど、来れる?!」
気まずい空気が、夏休みの間にギャルデビューしたテンションの高いユキちゃんによって、やぶられた。
「クラス会かぁ……。」
って事は、男子も来るんだよね……。
絶対、達也が許してくれない……。