掌
テレビを見たり……
少し幼い池内君が写った、中学の卒業アルバムを見たり……
楽しい時間は、どんどん過ぎていく。
気付けば、テレビの上のデジタル時計は21:55と表示している。
「あっもう10時だ…。帰らなきゃ……。」
門限のあるあたし。
あたしの思いなんて関係なく、楽しい空間から抜け出さなくてはいけない、家のルール。
がっくりとうなだれながら呟くと
「えーっいいじゃん!明日日曜だし、このままオールしようぜ!」
健太君は、自分の意見を押し通すタイプだ。
「う〜。」
あたしだって帰りたくないよ……。
鞄を掴みながら、もじもじしていると
「どうしても帰らなきゃだめなの?」
池内君が、悲しそうに聞いてきた。
そんな顔しないで………
また胸が………
今日のあたしの心臓は、人生で一番といえるくらい忙しなく、池内君によって動かされた。
その時、真奈美が提案。
「私の家に泊まる事にしたら?私が、歩のお母さんに電話するよ!」
そうしろそうしろと、男子二人も盛り上がる。
「じゃあ………」
そうして、あたし達は池内君の家で、朝まで騒ぐ事になった。
初めて門限を破った事で、お母さんとお父さんに罪悪感があったが、みんなとの楽しい空気がすぐにそんな気持ちを吹き飛ばしてしまったんだ。