掌
居酒屋の前の、道路と歩道を分ける白いガードレールにもたれる達也。
居酒屋の出口からガードレールまでの距離が、果てしなく遠く感じた。
硬直するあたしに、低い…重い声で呟いた。
「クラス会…行ったんだ?」
びくっ、と全身が揺れた。
汗が額から顎にかけて、筋となって落ちる。
クラス会の事、誰かに聞いたの…?
やばい…やばい…。
あたしが今でてきたのは居酒屋。
言い訳なんて、できない。
でも、いたのは少しだけだし、真奈美以外とほとんどしゃべってないし、お酒も飲んでないし……
話せば分かってくれるよね…?
「達也…あのね……」
嫌がる足を無理やり動かして
異様な空気を纏う達也に近づく……
あまりの想定外の出来事に、混乱していたあたしは
忘れてたんだ。
話せば分かってくれるなんて、あり得ない事を…………。