掌
公園を離れ、あたしと真奈美は駅前の広場に来ていた。
「歩…大丈夫?大丈夫?」
真奈美は、さっきからそればかり。
広場の時計台の下のベンチに座り、自販機で買ってきたジュースをあたしの腫れた部分にあてて、冷やしてくれている。
さっきあたしに抱きついたせいで、スカートに土がついてるけど、そんな事気にしないであたしの体の心配をしている。
「大丈夫だよ…。」
あたしは笑顔でかえすけど
ずっと震えが止まらない。
達也は健太君に連れられて、どこかに行ってしまった。
今日はもう、きっと大丈夫。
でも次会ったときは?
真奈美も健太君もいなくて、二人きりで会ったときは?
今日の事を掘り返してまた………
「…歩……?」
歯がカチカチなるほど震える。自分の体じゃないみたいに冷たくなる。
ジュースを横に置いて、真奈美が慌ててあたしをまた抱きしめてくれた。
けど
震えは止まらない。
達也の、怒り狂うあの表情
冷たい、あたしを見下すあの目
日に日に増える、消えないアザ
大好きだった掌は、固い拳に形を変えた
それらが、今あたしにとっての“達也”だった。
そして、暖かい中で、自分を大事に思ってくれている人の中で
今まで浮かんでも決して認めなかった、認めたくなかった事が…
口から、言葉となってこぼれ落ちた。
「達也が……怖い……。」
真奈美の腕に、あたしの涙が落ちて触れた。