掌
次の日、歩はすぐに帰ってしまった。
達也君の話しを、したかったのに……。
歩は話したくなさそう。
私はどうすればいいのか、分からないよ。歩のあんな笑顔見たくないのに……。
そんな時、健太から電話がきた。
「はい、なぁに?」
『おー、歩ちゃんもう帰ったん?』
さっき帰ったと伝えると、すぐさま、健太は用件にはいった。
『歩ちゃんさ…何があった?昨日むっちゃボロボロだったけど、転けたって嘘なんだろ?』
そういえば、健太は歩の、あの傷だらけの姿を一瞬見てる。
「いや……えっと……」
健太は、達也君が暴力ふるってる事、知らないんだよね…。
『なぁ、教えてよ。俺これでもすげぇ心配してんだけど……。』
いつになく、健太の声に落ち着きがなくて、本当に歩を心配しているのが伝わる。
健太は、達也君と仲いいし……健太なら、達也君に暴力をやめさせる事ができるかも。
健太の真剣さと
私の力だけじゃ、あの二人を救えないという気持ちが
私の口を緩めてしまった。
歩ごめん……。
歩を助けたいとか言いながら、助ける事ができない非力な自分を目の前にして、意地になっていたのかもしれない……。
助けたいとか言いながら、私は逆に歩を苦しめちゃったんだね。
歩ごめんね。