掌
私の知ってる全てを、健太に話した。
健太は、終始黙って……何を思っているんだろう。
話し終えた時、私は涙をこぼしていた。
言葉にする事で、歩の辛さを実感し……どうする事もできない自分が悔しくて。
でも、健太にばれないように、声は必死に普通を保った。
『……そっか、わかった。』
健太は、今の歩と達也君の現状を理解したようだ。
「私…どうすればいいんだろう…?歩のために何ができる?」
勝手に悩んで
勝手に苦しんでいた私。
誰でもいいから、私の親友……歩をどうすれば暴力から救えるのか、教えてほしかった。
『………俺の知ってる事…話すよ。』
健太は、静かに話しだした。
もう外は暗くなり、長い事話しているんだと分かる。
でもそんな事、気にしないで聞き入った。
達也君の過去を。
『だいぶ前にな、達也と二人で飲んだときに、少し聞いたんだ。あいつ自分の話し全然しないから、酔ったときくらいしか聞けねぇんだけどさ。』
「何を聞いたの?」
ゆっくり記憶を探りながら話そうとする健太を、せかす。
『…あいつ中学のときに、すげぇ好きな子がいて付き合ってたらしいんだよ。』
達也君は、酔いながらも、その子との思い出を楽しそうに話したらしい。
『その子が初めての彼女だったらしくて、色々戸惑う事もあったらしいんだけど、一番焦ったのが自分の嫉妬深さだったんだって。』
確かに……歩の話しを聞けば、達也君がすごい嫉妬深く、束縛する男だという事は誰でも分かる。
『その彼女は男友達が多くて、自由奔放な子だったらしい。それが、達也は不安でどうしようもなかったって……。』
そして、気付いたらその不安が暴力として彼女に表れてた。
『そう俺に言いながら、達也は苦しそうな顔してたよ…。』