掌
電車って、こんなに遅かったっけ?と思いながらも、歩の待つ私の地元の駅を目指した。
改札口を出ると、木陰でたたずむ歩がいた。
声をかけて近寄るが、歩は、今まで見た事もないような眼差しを、私に向けていた。
「…真奈美…ひどいよ…。」
そして、呟いた。
健太……達也君にやめるよう言ったんだ…。
でも、どんな言い方したの?歩、泣きそうな顔だよ?
でも、今日は殴られなかったみたい。
よかった……よかった……。
安堵した私に
「あたしの気持ちなんて分かんないくせに!」
歩が叫んだ。
歩…?殴られないのは、良い事なんだよ?いや、殴られないのが、普通なんじゃないの?
歩、達也君の愛情を、なにで量ってるの?
歩、そんな暗い瞳でどこを見てるの?前みたいな綺麗な瞳はどこいったの?
何言ってんのか、全然分かんないよ。
歩…ちゃんと目の前の私を見て。私の声を聞いて。
歩……しっかり…しっかり現実を受けとめて。
歩!