掌
あれからの私は、何も考えられなくなった。
ただただ、夏の暑い日を、流れるように過ごしてた。
健太から、誘われれば遊んだ。
けど、何を話したのかなんて、覚えてない。
歩と遊ぶ約束をしてた日は、何回もやってきた。
携帯をスライドさせ、【田辺 歩】の番号を画面に表示させても、あの言葉が頭をよぎって、通話ボタンは押せなかった。
当然、歩からの連絡もこない。
私が、唯一思う事は
歩が大怪我してませんよーに。
これだけ。
得る物はなく、大切な物を失って、夏休みが終わった。