掌
クラス会。歩はすぐに帰っていった。
たくさんの料理とたくさんのお酒が、机の上に散らかっている。烏龍茶をちびちび飲みながら、盛り上がるクラスメイトを眺めてた。
「真奈美ちゃん。」
「あっ小川君、今来たの?」
うん、と言いながら、さっきまで歩が座っていた私の隣の座布団の上に、あぐらをかいた。
そして、机に乗ってた誰のか分からないカシスオレンジに、口をつけた。
次の瞬間、私は飲みかけの烏龍茶を、机に捨てるように置いて、居酒屋を飛び出した。
小川君が、
「外に池内いたよ。歩ちゃんを迎えに来たんかな?仲いいよな〜。」
なんて、羨ましそうに言ったから。
歩……!
直感で、歩が危ない、と思った。
外に出ると、目の前の道路を車が通り過ぎただけで、誰もいなかった。
いや、一人いた。
「よっ。来ちゃった。」
白いガードレールに座る、私の彼氏。
手を振らなきゃ、気が付かないとこだった。
「歩と達也君見なかった?!」
周りを懸命に見渡す私に、健太は見えなかった。