掌
健太と達也君は、どこかに消えていった。
駅前の、大きな時計台の下のベンチに、歩と二人で腰掛けた。ちょっとでも腫れがひけば、とジュースを買ったけど、あんまり役立ってないかな?
不意に、歩の小さな肩が震え始めた。生ぬるいお湯に入っているような暑さが漂う中で、凍えるように、震える歩。
見るに耐えなくて、少しでも、落ち着きを取り戻してほしくて、抱きついた。
そして、
歩の虚ろな瞳が、涙で潤み、ぽろぽろと滴となって落ちた。
止める事なく湧き出る涙と、絞りだすような歩の言葉を、私は黙って受けとめた。
やっと、初めて、私が歩のためにできる事だった。
「大丈夫。私が守るよ。」
時計台は9時をさしている。
たくさんの外灯によって、明るい夜。
闇が覆った歩の心を、私が明るく照らしたい。