掌
いつも通り、2人で教室から下駄箱に向い、靴をはいて駐輪場に行く。
達也が自転車通学だから。
「あれ?達也、今日自転車は?」
「あっ、そうだ。今日から電車にする事にしたんだー。最近暑いし、チャリはしんどい。」
そう言って、いつもの道を、今日は二人乗りじゃなく歩いて帰る。
「そっかぁ〜。じゃあもっと一緒にいれるね。」
照れながらも、一緒にいれる時間が増えたあたしは、純粋に嬉しくて、あたしより頭一個分背が高い達也を見上げて、笑った。
「……歩…可愛いな。」
優しい顔であたしを見ながら、照れ屋の達也が言う。
「んなっえっ?!」
突然の言葉に戸惑うあたしに微笑んで
「手つなご。」
おっきな掌を、ズボンで拭いてあたしに向けた。
「うん!」
あたしも、カーディガンで自分の手のひらを拭いて
ゴツゴツした達也の指に、自分の指を絡める……。
達也の掌の中に、あたしの手はすっぽりとおさまった。
「ははっ…ちっせ。」
達也は、きゅっと絡める指に、力をいれた。
あたしも、負けじと力をいれて、2人で笑った。
駅に向かうなかで
信号が赤になっても
人が多い道も
お互い離そうとしなくて、お互い離したくなくて
今日あった事を話しながら、歩いていく。