第四章 達也・歩。

ある日の1組。


「歩ぃ、なんか今日元気なくない?」


真奈美が、窓際の自分の席に座るあたしの前の席に座って、心配そうに話しかけてきた。


「別に元気あるけど…?」


「いや、ない!隠そうとしても、私にはお見通しだよ!そうやって辛い事隠すの、歩の悪いとこだよ。」


あたしの机に両手を置いて、俯き加減なあたしに、ずぃっと顔を近付けてくる。


………真奈美には負けるなぁ。


あたしの目から目を離さない真奈美に負けて、昨日の出来事を話すはめになった。


「実は、昨日……初めて達也とケンカしちゃって……。」


「マジで?昨日って、達也君と歩の1ヵ月記念日でしょ?何でケンカなんか……」


すぐ目の前の真奈美の顔が、驚きと悲しみの入り交じった顔になった。



そう、昨日は達也と付き合って1ヶ月の記念日。だから学校の後、お祝いしたんだ。


「うん……ケンカの原因はしょうもない事だし、もう仲直りはしたんだけど…。」



初めて見た怒った達也…。


思い出すだけで、落ち込んでしまう。





昨日


最後の授業が終わった後、すぐに達也の家に遊びに行った。


相変わらず、お母さんはいなくて、二人で仲良くしてたんだけど、ほんとささいな事で言い争いになって……




「達也ウザい!」



思ってもない事を勢いで言い放ってしまった。



その瞬間




パチン!




あたしの左頬に鋭い痛みがはしった。



何がなんだかわからなかった。


顔をあげると、達也の手の甲が目の前にあって、叩かれたんだ、とやっと分かった。


痛みよりも何よりも、達也に叩かれたという事実が


悲しくて 驚いて


涙が溢れた。



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