掌
「歩ぃ〜おはよっ!」
「あっ真奈美…おはよぉ。」
朝
混雑した電車をやっと降り、駅前の広場の時計台の下で、満員電車にはない新鮮な初夏の空気を吸っていたら
真奈美が近づいてきた。
一緒に行こう、と学校への道を歩く。
すると、唐突に
「歩…また何かあった?」
「へ?!」
昨日の達也との事を思い出して、ドキッとした。
「なーんかもじもじしてない?昨日達也君と帰って、またなんかあったん?」
え〜と〜。
とかごまかしていると……
「はっはぁ〜ん。」
真奈美は、ニヤッと口角をあげた。
「さては歩!」
ぎくっ
「脱処………」
「声でかいっ!」
あたしの雰囲気から、昨日の出来事に感づいた真奈美は興奮して、学校や会社に向う周りの通行人に、大発表しそうになった。
なんとか口を塞いでまぬがれたけど……
「脱童貞かぁ〜〜!!」
少し前の信号待ちの団体の中で、健太君が叫んでる…………。
そして隣で焦って怒る、達也。
二人の周りで、聞こえないふりをしつつも、居心地悪そうな、信号を待つ人々。
「あらら。」
健太君と真奈美は…ほんと似た者カップルだなぁ…………。