掌
キーンコーン………
最後の鐘が鳴る。
やっと1日の授業から解放され、騒めく教室を真奈美と後にした。
階段を降りていくと、見覚えのある明るい色の頭と黒い頭が。
「あっ健太と池内君!」
ドキ
健太君と池内君が下駄箱にもたれかかっている。
真奈美が体育の時変な事言うから、妙に意識しちゃうじゃん…。
隣のクラスの二人が、あたし達を待っていたのは
賭けにしていたジュースのため。
池内君と二人で、外の自販機まで買いに行く。
「うわっと。」
外に出た途端、新緑を撒き散らすような風が吹き
私と池内君の、並んで歩くには少し開きすぎる間を、通りすぎた。
あたしの、セミロングの髪がふわふわと舞うが、池内君に触れる事はない。
「もう5月なのに、風が冷たいねぇ。」
「ねぇ…。」
昇降口を出て、10mに満たないほどの場所にある自販機が、とても遠く感じる。
……何話そう何話そう……。
「ジュース…何飲む?」
「んーお茶でいいや。田辺さんは?」
「オレンジジュースにしよっかな。」
……なんてぎこちない会話だろう……。
でも、人見知りのあたしには、これが精一杯だよ……。
楽しそうに帰っていく生徒達が溢れるピロティーは、
今のあたしには、とても居心地が悪かった。
達也君にも居心地を悪くさせてごめんね。
そう心の中で呟きながらジュースを買って下駄箱に戻った。
「そーだ歩っ!帰りに、コンビニ付き合ってくれない?」
真奈と健太君の元で緊張を解いていたあたしは、コンビニ行きを断る理由もなく、オレンジジュースを飲みながら頷く。
「あっ、俺も、コンビニに用事あるんだよね。」
コンビニ限定のコスメを買うんだ、と話す真奈美にかぶさるようにして
すかさず健太君が話に入ってきた。
「達也も行こうぜ!」
「別に暇だからいいけど…」
「じゃあみんなで、行こっか。」
ミルクティーを片手に、真奈美が立ち上がり
四人で、学校の近くの、コンビニに向かった。