掌
「テレビ面白いのやってなーい!」
家のリビングのソファーでくつろぎながら、テレビに向かって、リモコンをカチカチといじるあたし。
「もうお風呂入りなさいよ。」
台所からのお母さんの言葉に従おうと、立ち上がったとき……
♪〜♪〜♪
「あっメール!」
携帯が鳴ると、反射的に嬉しくなる。
女子高生なんてそんなもん。
もう一度、ソファーに座り直して、折り畳んであった携帯を開いた。
画面に表示されたのは、知らないアドレス…
!!ドックンッ!!
メールを開いた瞬間、お母さんにも聞こえたんじゃないか、と思うくらいの音が、胸の辺りで鳴った。
【こんばんわ。池内達也です。今大丈夫?】
絵文字なしの、さっぱりしたメール。池内君っぽいなぁと思ってしまった。
ドクンドクン…
心臓の音は、鳴り止まなくて、微かに指が震える。なんか緊張する…。
10分かけて打ったメールは
【大丈夫だよぉ☆どぅしたの??】
たったニ行。
女子高生のくせに、メールが苦手なあたし……。
♪〜♪〜♪
返事早っ!
【健太にお菓子パーティーの日にちを決めて欲しいって言われて、学校じゃなかなか時間会わないと思ったからアドレス勝手に聞いちゃった。ごめんね。】
会わない……漢字間違えてる。なんか、口元が緩んでしまう。
【そっか!全然ぃぃょ☆ぃつにしよー?】
二通目も、全く可愛げのないメール……。
【土日がいいな。てかお菓子パーティーとか初めてなんだけど。笑】
【そぉだね!土日のどっちがぃぃか真奈美にも聞ぃてみる☆お菓子嫌ぃ?】
【よろしくね。健太はいつでもいいらしいから。さりげに俺お菓子好きだよ。】
さりげってなんだよ。
とか思いながら、お風呂なんて忘れて、夢中でメールをした。
他愛もない内容だけど
池内君がチョコ好きな事…
サッカー部に入ってる事…
池内君の、何かがわかるたびに、あたしの口元は緩みっぱなしで
胸は高鳴りっぱなしだった。