平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



「お父様、お呼びでしょうか?」



アタシの呼び掛けで、今まで六壬式盤で占いをしていた父は顔を上げた。



「おお、聖凪。遅かったなぁ…もうちょっとお父様に会いに来るために、駆けてくるとか出来んのか?」



この父親は…



いつも、女子らしくおしとやかにと言ってるのは何処の殿方かしら。



「あいにく、お父様のために使う体力は持ち合わせておりませんので…。」



「ほぉ、いつも夜中に都を駆け回っている年頃の娘がいると聞いていたが何処の娘だろうか?しかも、話を聞くと私の密命だそうじやないか。」



「…。」



いつもは絶対に負けないのに!!今度は絶対に言い返せないようにしてやるんですから。



「…ところで、話とは何ですか?また都で不穏なことでも起こったのですか?」



父の前に用意されていた畳に居住まいを正して、今度は真面目に話をする。



返答までに間があった。



「いや。…不穏なことが起こったのはこの家のことだ。」



「家!?それはどういうことでしょう?屋敷内では何も感じられませんが…」



気を凝らしてみても、邸内から不穏なモノは感じられない。



渋い顔をした父がじっと、アタシの顔を見つめる。



「何でしょうか…?」



扇で口元を隠し、父に真意を問う。



はぁ…



溜め息!?



溜め息するほどアタシの顔が悪かったのかしら?



それはいくら実の父であろうと、あまんまりではありませんか?



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