平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



複雑な父親心?



…だったら身分など関係無しにキッパリと断ったらいいでしょうにっ!!



あちらだって、結局は参議殿の『ご子息』な訳だから。実際、お父様との身分はあまり変わらないでしょう。



「別に身分など気にしないでよろしいかと思いますが?だってご子息と言ったら、お父様も義理とはいえ大納言のご子息じゃないですか。」



指を立てて自分の意見を素晴らしいと考えるアタシに対して、父は先ほどと変わらず暗い。



「…それでも、私の位を考えると容易に断ることが出来ないんだよ。私は従五位下がいいところだからね。」



父の位である従五位下ではやっと帝が住まう清涼殿に昇ることが許されたばかりだ。



「でもしょせん、参議殿のご子息でしょう?親の位なんて関係ありません。いざとなったら、お祖父様の権力を借りるとか…とにかく、アタシは結婚なんてしたくはありません!!」



「一度…会ってはみないか?そうしたら、そこでキッパリ断るもよし、気に入ったら受けるでもよいではないか。」



「言っておきますが、アタシはまだ成人していません!!」



「後一月で成人だろう。よいか?これは父親の頼みだ、一度会いなさい。」



「…分かりました。一度会ってみます。それで、その者の名は?」



「藤原有嗣(フジワラノアリツグ)殿だ。」



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