平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
──どこまでも
どこまでも、果てしなく先まで闇が続いている。
少しの光も射さないこの場所に、アタシはどれくらいいたのだろうか。
流石にアタシも、もう駄目だと疑わなかった。
けれど、全てを捨てようとした時、一筋の光が降りてきたのだ。
温かく、優しそうなとても輝いて見えるそれに、飛び込みたい。
だが、もう立ち上がる力も残っていないのだ。
その場に座り込んだままのアタシに見兼ねた様に、頭の中に直接伝わってくる“声”がする。
『もどってきなさい』
…でも、立ち上がる力も無いのだもの。
そのまま、瞼を伏せるアタシに、もう一度“声”が聞こえる。
『大丈夫、もどってきなさい』
その優しくも力強い“声”に、もう一度顔を上げ光へと手を延ばしてみる。
寸でで届かなかった腕を、今度は力の限り延ばす。
指の先端がようやく、ちょんと光に触れると、光が弾ける様に広がり、瞬く間にアタシの身体を包み込んだ。
……眩しさと、
優しさと温かさで、ぎゅっと閉じた瞼をゆっくりと開いていく。