平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
会ってみるとは言ったものの…藤原有嗣と言ったら、凄く歳上じゃなかった?
それに、浮き足だった噂なんて耳にタコが出来る程聞いた…。
それに正室はおろか、側室もたくさんいるんじゃなかったの?
アタシはそんな輩などとは絶対に結婚なんてしたくはないの!!
それに、アタシは聞いた噂のほとんどを、友人に一言一句逃さずに教えたんだから!!
アタシの情報網舐めないでくださりたいものだわっ!!
それに、アタシはまだ子供で、急に婚儀などと言われてもそんなこと考えたこともない。
アタシは夢見る美少女なんていう柄ではないのだし。
はぁ…
気晴らしに都にでも出ようかな。
今まで着ていた、動きにくくて、重い十二単を全て脱ぎさり、アタシが自分で柊杞たち女房にばれないように作った衣を唐櫃の一番下から取出し着替える。
闇の中でも目立たない、女物にしては珍しい墨染の衣で、丈は動きやすいように膝の上、太ももあたりで切りそろえてある。
藤の花の刺繍が施してある紺色の帯で腰辺りをきつく締め、後に薄い生地の被衣を被るだけだ。
最後に髪を頭のてっぺん程の位置に結い上げきつく縛り、雑色や童子が履くような草履を履き、こっそりと家を出る。
門から出ると、門番に見つかり、部屋に戻されてしまうので、人目のつかない塀を助走をつけ木を蔦って上り、通りにでる。