平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
取り敢えずここは、兄上にでも頼んでみる事にした方がいいだろう。
父上にはきっと、右大臣からの呼び出しがかかっているはずだ。
「白虎、今度こそ誰にも見つかったは駄目よ?一条にある安倍邸に此れを届けて。兄上はまだ帰って来ていないでしょうけど、それまで屋根の上でもいいわ結界をはって待っていて。」
名を指された白虎は、汚名返上とばかりに顔を輝かせて胸を反らす。
「おうっ」
─解─
再び印を床につけて、悪鬼を拘束している結界を解く。
そこを空かさず、自分の結界を結んだ白虎がそのまま跳躍する。
目だけで見送った青龍が胡乱気な顔で、両腕を腰にあてる。
「白虎で良かったのか?あれなら俺の方が断然良かったんじゃないか?」
「まあ、白虎も先程の今で軽はずみな行動はしないでしょうし…貴方には此処に残っていて欲しいのよ、また何があるか解らないわ」
その言葉に青龍がふふんと鼻を鳴らす。
「そうだよな、やっぱりあの童子よりも俺の方が出来るよなっ」
勝ち誇った様な顔で、今にも鼻が伸びそうな青龍に冷たい視線を送る。
その童子と程度を同じにして、どちらが勝かを考える青龍も白虎の事は笑えず幼いと思うのは私だけだろうか。
そんな青龍を興味津々といった体で、目を輝かせていた二人が口を開く。
「あれが姉上の十二天将ですか!?」
「姉上の青龍と、父上の青龍では本当に似ても似つきませんねっ」
「おい、それはどう言う意味だ」
二人が歳相応なのに、負けじと青龍も参戦する。これでは本当に白虎の事を笑えない。
「二人とも、貴方達何をしに此処へ来たのか思い出してごらんなさい」
私が呆れていると、柊杞の大変恐縮した様な小さな声が届いた。
───それもすぐ近くで。