平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



大きなお腹で突然現れたため、さすがのお祖母様もぎょっとなさる。



「どうしました?」



「お祖母様、突然申し訳ございません。少しお話に…」



何も感付かれない様に振る舞ったつもりが、お祖母様は気付いた様にはっとすると、笑ってくれた。



「もう、大きなお腹なのですから、無理だけはなさらないで」



一日の殆どを御帳台で過ごすお祖母様にまで、私の性分を知られているのか。



流石に、それではいけないと思えてしまう。



一通りの挨拶を済ませ、場所を変えようとした時、何処からともなく卓巳君が出て来た。



「あねうえがこちらにいっらっしゃるとは、どうしたのですか?」



当然卓巳君と一緒に北、安芸の方は私と柊鬼を見てはっとした顔をする。



「西の対で、利宇古宇の姫が琴の手習いをしているの。卓巳君も聞いていらっしゃい」



そう促すと、卓巳君は目を輝かせて北の対を出ていった。



そしてそれに着いて行こうとする安芸の方を呼び止める。



「少しお話をしてもよろしいですか?」



そう言う私に安芸の方は、小さく頷いた。








北の対の端に人払いをして三人で座る。



「まず謝らせて下さい、中将の君からお話を勝手に伺いました。申し訳ありません」



いきなり頭を下げられ、少しの間固まっていた安芸の方は、直ぐに私よりも頭を深く下げた。



「いえっ、女御様のお耳汚しをしてしまい申し訳ございませんでした。」



私は柊杞と目を合わせる。



こんな事を言わせてしまうなんて……やはり申し訳ない事をした。



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