平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
天空の言った事が正しい。そう気付いた私は、ぐっと言葉に詰まってしまう。
「だって主だもの」
正論に反論出来る訳もなく、無茶苦茶な論理を放ち明後日を向く。
そっぽを向いた私に、天空はもう一度声無く笑うと、くしゃりと私の頭を撫でた。
「母になっても子供だな」
「今は姫宮も居ないからいいのよ」
良くはないのだが、今は良としよう。
それにしても……
ふと思い当たる。
天空とこうも話が弾んだのは初めてではなかろうか?
そもそも天空が笑ったのも初めて見た気がする。
もうずっと一緒に居るような気もするのだが、まだ一年も経っていないのだ。
ほのぼのと考え事をしていた時、急に胸の奥が温かくなり、自分の意志に反して涙が零れる。
温かくて優しい涙。
「終わったようだな」
北の対の方を見やる天空に頷く。
「ええ、それも最善の終わり方よ」
涙を拭う私の頭を天空がもう一度撫でる。
「良かったな」
「ええ」
自分の胸の中もほかほかと温かくなってきた時、風が動いたかと思うと朱雀が現れた。
「姫っ!!」
気分を昂揚させた朱雀は身を乗り出す。
「ええ。詳しく聞かせて?」