平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
それにしても、一体何があったのだろうか?お祖父様の使者と何の関係があるというのだ。
一人考えていると、柊杞が少将の君に指示を出しながら、対屋に戻って来た。
少将の君とは、年若いが気が良く利く柊杞のお気に入りの女房のこと。
「有嗣様とはお会いにならなかった旨、殿にお伝えしてちょうだい。」
「承知しました。」
少将の君が下がると、柊杞がアタシの前に腰をおろした。
「柊杞、お祖父様は何て?」
「姫様…それは解りません。ただ、文には今回の件を取り止めるようにとだけ書いてありましたので、理由までは…。」
本当にどういう事なのだろう。文には容易に書けない事なのか…。
遠くから、ドタドタと半ば走るような足音が聞こえて来た。
まったく騒々しい。考え事の最中にっ!!一体誰なのかしら、弟たちにしては足音が重く大きい。
アタシの気持ちなどお構い無しに、足音はドンドン大きくなってきた。