平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



「…いかかですか?」



アタシがそう訪ねると、お祖母様はふわりと微笑んで「ありがとう、随分楽になりました。」と喜んでくれた。



「そういえば…入内するとか?」



「…はい。お祖父様がその様に申されました。ワタクシなど、恐れ多いかぎりで…。」



「あら?姫ならば東宮のご寵愛も受けられると思うのだけれど?」



「はぁ…。」



東宮の寵愛が云々では無い、入内のこと事態が胸に重くのしかかっている。



「誰か…お慕いしている殿方でも?」



「いっ、いえ!!そのような方は居りません!!」



一瞬、頭にあの望月の夜に会った人が浮かんだけど、その訳も解らずにかき消す。



「焦らなくてもよろしいのに。貴女くらいの歳だと……いえ、女なら極当然のことですよ。」



「……当然。」



「…とはいっても、貴女の場合は今から……と言うことは、出来ないのだけれど…。」



そうよね、アタシはもう結婚したも同然のような物だもの。



アタシの立場…普通の貴族の姫だったなら、喜ぶのかしら?…入内するということは。



少なくとも、年頃の姫を持つ父親ならば、誰もが羨むでしょうね。



それとも、身分の低いアタシの様な者が入内するのですもの、妬む人もいるでしょう。



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