平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
「あねうえ…もう、あえないの?」
もうすぐ四つになる妹が、大きな瞳に涙をたっぷり溜めてアタシの顔を覗き込んでくる。
「聖(キヨ)、泣かないで?大丈夫よ、また会えるから…笑って?」
左手で聖の頭を撫で、右手で零れた涙を拭う。
「姉上っ、行かないでっ!!」
アタシの膝に顔を伏せて泣きじゃくる聖をあやしていると、今度は左から弟が飛び込んできた。
「翡翠(ヒスイ)…。いきなり飛び込んできたら危ないでしょう?」
とりあえず、翡翠が今しがた行った行動を嗜める。
「姉上…」
こちらも、アタシの注意に少しも聞かずに、涙を溜めた瞳でアタシを見上げてくる。
ふぅ…
「…本当に可愛らしいんだから。翡翠、聖?姉上は内裏に行くことになっているけど、まだ行かないわ。」
「本当に?」
怪訝そうに眉を寄せる翡翠に一つ頷き続ける。