平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
「ええ、一月はお祖父様の所にお世話になるのよ。だから、二人とも毎日でもいらっしゃい。」
と、二人を安心させるために笑いかける。
「…っうん!!毎日でも行く!!」
「あにうえばかりずるいっ!!きよも、いきますっ!!」
と、なんとか二人をなだめ終えた所へ、また五月蝿い殿方が遣ってきた。
「聖凪、久しぶりだね。」
この胡散臭い、やけに爽やか過ぎる笑みをアタシに向けるのは、
「兄上、こちらの対屋に来るのは珍しいですね?」
几帳に隠れて、胸から上しか見えなかった兄上の身体が露になる。
そして、兄上の両脇に抱えられた物体を見て、思わず顔がほころんだ。
「別に俺は、そのまま二条のお邸に行っても良かったのだけど…この子等が淋しそうだったからね。」
そう言って、抱えていた物を床に降ろす。
「それにしても入内なんて、大出世だね聖凪。俺も早く一人前になりたいよ。」
「でも、アタシはお祖父様の養子になるんですもの、別段驚くことじゃないですよ。」