平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



「…とりあえず、本日は裳儀ということで、成人おめでとう。」



「ありがとうございます。」



普段は好敵手心むき出しのアタシたちだけど、今日はお互いに頭を下げる。



そして、未だにたったままの二人の背中を兄上が、ポンッと押す。



「ほら、二人ともっ。」



なんだかんだで、この部屋に兄妹全員が集合したことになる。



「…」



「…っ」



「…ん?」



いつまでも何も言わない二人に、首をかしげる。



「あ、姉上…えっと、その…。」



「「…おめでとう…っ。」」



照れくさそうに、二人が俯きながら頭を掻く。



「ふふ、ありがとう、榊(サカキ)桂(カツラ)。」



「別に…」



「俺達は、姉上が居なくなって嬉しいんだからっ…な、榊?」



「ああ…邸が広くなる。…ウチはあまり広くないから。」



双子たちの会話を見て、アタシと兄上は目を合わせて、笑ってしまった。



「ぷっ!!全く、素直じゃないんだから。」



「本人の前では、本心は隠す物だよ。二人とも、来年には出仕することになるんだから、覚えなさい。」



「兄上ー?本心は…って何ですか?本心はって!!」



「ははは…」



「ははは…じゃないですから。全く兄上は、それでも大人と言い切れるのですか…。」



そういい、アタシは此処で過ごす最後の時間を、兄妹で笑いあって過ごした。



< 39 / 241 >

この作品をシェア

pagetop