平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
どうせ、出ていったらたんまりと説教をされて自室である東の対に連れ戻されるに決まっている。
そんなものは真っ平ごめんだわ。
女房たちの声のする方に向けていた視線を歴史の書物に戻し、小さな灯りで読み始める。
物語よりも歴史書の方が断然面白い。他人の恋愛なんかが書いてあるものを読んで、どこが面白いのかしら?
やっぱりアタシの気性は貴族の姫に合っていないのよ。
あえていうなれば、ある物語を宮中で御執筆していらっしゃった、女房殿を父上様が「もし姫が男だったら」と嘆いたようにアタシも男に生まれれば良かった嘆きたい。
お父様だって、アタシは素晴らしい才能があるんだから嘆いてくれても良いものをっ!!
それからずっと集中して読んでいたら、目の前が急に明るくなった。
ずっと暗い所にいたから、眩し過ぎて何も見えない。
「姫様っ!!またこんな所に!!何度言ったらこんな所に来てはいけないと解るのですか!!殿様と北の方様がこんなところを見たらなんと思われることか…」