平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
一つ時ほど車に揺られ、二条のお屋敷でお父様と兄上と合流し、さっそく裳儀の支度に入ることになった。
お祖父様やお祖母様に挨拶をし、これから自分の部屋となる西の対に初めて足を踏み入れる。
西の対は以前、お母様がまだこちらにいらっしゃる時に使っておられた部屋だ。
調度類や何もかもが新調されていて、少し落ち着かなかったけど、本当に大貴族の家の子供になるという実感が出来た。
お母様は「すぐに慣れますよ」とおっしゃっていたけど、アタシは本当にこの生活に慣れる事が出来るのだろうか?
今までも、お祖父様の援助もあり、お父様の官位以上の暮らしをしてきていたけど、格が違う。
他人の部屋と思うならば、別だと思う。けれど、この綺麗に整えられた部屋は自分の部屋なのだ。
それに、今までは一つの対屋を小姫と一緒に使っていたのに、これからは一つの対屋を…加えて、一条のお屋敷の対屋より大きな対屋を一人で使うなんて。
これからの生活に、多少の不安も覚えつつ自分の支度をしていった。
お召し物は乳母を中心に、女房たちが綺麗な単衣を着せてくれた。
お化粧は自分でも出来たのだけれど、お母様自らしていただいた。