平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
夕刻になり、二条邸では盛大にアタシの裳儀の儀式が行われた。
勿論、腰結の儀はお祖父様が勤めてくださった。
アタシの為に、お祖父様の末の妹君で帝の女御でいらっしゃる麗景殿の女御様までもが、祝ってくださった。
親族の方々も沢山いらっしゃって、アタシには勿体ないとても素晴らしい夜となった。
もうすぐ、四十七になるお祖父様もとても生き生きとしておいでで、孫の身としてもとても安心できた。
卓巳君からも、まだ習いたてのたどたどしい字でお祝いの文が届き、ご病床で参列出来なかったお祖母様と二人で卓巳君からの文を読みました。
今日からアタシは、この内大臣邸の姫になったのだ。お父様とお母様との繋がりが切れた訳では無いけれど、悲しくなり夜は御帳台の中で一人で泣いてしまった。
お父様と兄上は夜が明ける前に、お母様はお昼になる頃に退出するそうで、まだ夜が明ける前に目を覚ましお別れの挨拶をした。
きっと、お父様や兄上と直に会うことが出来るのはこれが最後。
───父上、兄上、本当に…今までありがとうございました。
二人を見送ってからアタシは、まだ眠っていらっしゃるお母様の御帳台へ潜りこんだ。
「…ん…姫?」
「母上。」
目を擦るお母様に隙間が無いほどにくっつく。
「いつまでも甘えん坊なんだから。…聖凪、貴女はいつまで経っても私の可愛い姫よ。」
「…はい。」
優しく抱き締めて下さるお母様に、頷く。