平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
昼近くになり、お母様と一緒に東対にいらっしゃる麗景殿の女御様の所にご挨拶に伺うことになった。
アタシが麗景殿の女御様に対面するのは初めてで、少々不安になりながらも対屋を訪れる。
お母様に女御様がいったいどんなお人なのかを尋ねても、「おっとりした、素晴らしい方よ」としか教えてくれない。
もう、アタシの心の臓はいつ壊れても可笑しくないくらい、活発に働いている。
粗相が無いように、粗相が無いように…と自分に何度言い聞かせる。
お祖父様に言わせると、これほどの後ろ楯はないのだとか…。
ふう…そこまで言われると、頼もしいと思えず逆に怖い。
母屋に通され、頭を下げる。
「お初にお目にかかります。安倍晴明が娘にございます。」
アタシがそお言うと、女御様は優しくアタシを嗜めになられる。
「ふふふ、もう晴明殿の娘ではなく、実信が娘でしょう?これからは、慣れていかないといけませんよ?」
あ…、早速やってしまった!!
「も、申し訳ございませんっ!!」
「あらあら、謝ることでは無いわ。それに…その様に畏まらなくても大丈夫よ。貴女はもう、私の可愛い姪なのですから。」
「そうでしょう、桜の上?」とお母様に微笑んでいた。
「ええ、私もその様に言っていただけて嬉しゅうございます。」とお母様も微笑んでいて、とても和やかな時間をすごした。
退出時には「何でも困ったことがあったら、言ってちょうだい」と優しい言葉をかけていただいた。