平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
また筆頭女房で、アタシお付きの女房、乳母の柊杞(シュウキ)がガミガミと小言を漏らし始めた。
「…です。やはり私の教え方が悪かったのでございましょうか?これでは、殿様にお見せする顔がございません。…姫さま?聖凪(セイナ)様?聞いておられますか?聖凪様!!」
どんどん声を荒げる柊杞の顔は鬼の形相とまではいかないが、それは物凄い顔だった。
「姫様っ!!」
「解ったから。そんなに声を荒げないでも十分に聞こえるわよ。もう少し、女子らしく振る舞うということでしょう?」
「いいえ、違います。」
「あら、違うの?」
まさか違うとは思わなかった。だってアタシは女子らしく振る舞ったのなら言うことなど何もないのだから。
「ええ、少しではございません。言葉では言い表わせない程、女子らしくなさって貰わなければなりません。」
そんなのアリですか?
「でも柊杞。アタシは此処にいるどの女房より書き物も琴も詩も縫い物も上手な自信があるのよ。」
それに頭も良いのだし。