平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
扉を開いた状態で、そのまま固まってしまった二人に声をかける。
「あら?桂に榊、そんなに息を切らしてどうしたの?」
わざと何も聞かなかった風を装い、二人をからかう。
「「あ、ああああ姉上っ!?」」
案の定、顔を真っ赤にして動揺する可愛い双子達。
この二人の登場により、緊迫していた空間が一気に溶けた。
お父様は眉間に手を当て、兄上は肩を鳴らしながら大きなため息をつく。
「お前達は、もう少し落ち着く事ができんのか…此処へは許可なく立ち入るな、と日々申しておろうが…」
「全く、誰に似たのか…」と手遊びのように、扇を開閉させる。
「ふふふ、父上これでは真剣な話は出来ませんね。詳しいことはまた、文か式でお伝えください。ワタクシは、二人の相手を少ししてから帰る事にします。」
「お祖父様に余り長居はしないように、と言われていますので…」と言って、固まっている二人を誘い塗籠を後にした。
アタシ達が出ると、兄上が直ぐにやってきた。
「聖凪、二条の邸には後で俺が報告に行く。俺たちで、平穏な都に戻そうな。」
と、それだけ言うと元来た道を引き返して行った。
榊と桂はアタシの後ろを、先程の事が余程恥ずかしかったのか俯き無言で着いてくる。
それにしても、何時も悪戯や軽口しか叩かない二人が駆け込んできてくれて、正直とても嬉しかった。
こんなアタシでも、ちゃんと姉だと認めてくれていることが分かり、今までの寂しさも少し無くなった。
「榊も桂も姉上が居なくて、本当に寂しかったのね?」
と、二人を見てクスリと笑う。
「そ、そんなことっ!!桂が行こうと言ったから、着いてきただけだ!!」
「違うよ、榊が言い出したんだ!!」
榊と桂が口々に言い募る。半ば喧嘩にでも発展しそうな勢いで…。
それでもこの二人の喧嘩も、久しぶりで懐かしく思えてくる。
「べ、別に姉上になんか…」
「会わなくても良かったの?ワタクシは二人に会えて、とても嬉しかったのよ。」