平安異聞録-お姫様も楽じゃない-



「…足だけは引っ張らないで。」



冷静沈着、少しも可愛げの無い少女が太裳。



光り輝く金色の長い髪は腰に届く位で切り揃えてあり、若草色の不思議な着物を品良く着こなしている。朱雀と同年代だろうか。



「太裳、余り無礼な発言は控えなさい。」



優しさが外ににじみ出ているのが凄く分かるのが、六合。



こちらも、太裳と同じく金色の髪で、肩に付くくらいの不揃いな髪型をしている。着物は白を基調としていて何とも不思議な格好をしている。



「非常時に一番、腕がたつのはアタシよ。期待していてねっ。」



男らしく爽やかな女性が天后。



夏の空を薄めたような髪の色で、高い位置で一つにまとめられている。出歩く時のアタシの格好と、良く似たものを着ている。



「聖凪様、お役にたてるかは分かりませんが…聖凪様のためなら、何をも惜しみません。どうぞ良しなに…。」



この儚げな印象が強い、美しい女性が貴人。



薄い緑色の髪は肩までで、緩くうねっている。黄色と若草色の、春のような格好をしている。



「我らの事は、私にお申し付け下さい。私から皆に伝えますので…。」



この父親のような温かさと、穏やかさを持ち合わせるのが勾陣。



髪は老齢の為か白髪で、背中辺りで一つに縛ってある。白を基調とした、例えるなら異国の僧のような格好をしている。



「…馴れ合う気は、毛頭無い。」



触れてはいけない様な、そんな空気を醸し出しているのが騰蛇。



髪は濃色で、白虎の髪型に似ている。上半身は何も着ておらず、下は黒い袴を履いている。



「……」



寡黙で、先程から一言も言葉を発さないのが天空。



黒い、黒曜石の様な髪の色で、昔の貴族の校務服の様な物を身に纏っている。



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