平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
「御通ししてちょうだい。」
少し、思いを巡らせてから女房に指示する。
しばらくしてから、遣ってきた兄上に円座を勧める。
今アタシたちは、御簾も几帳も無しに直に対面している。
それを見て、微かに眉をひそめる者もいるが、乳母の柊杞が何も言わないため、控えている女房は皆黙っている。
「姫、実は詳しい事が解った。早急に解決した方が、良いかもしれない。…後々の為にも。」
険しそうに目を細める兄上に、アタシも真剣になる。
「では、原因が解ったのですか?」
「ああ、呪咀や貴族がどこぞの法師を雇った、等の物ではない……」
兄上は言い掛けて、口を塞ぐ。
チラリと、一瞬女房たちに向けられた視線を、もう一度アタシに向ける。
アタシもそれに応え、兄上に向かって一つ頷く。
「中将の君。」
アタシが柊杞を呼ぶと、頭を下げ他の女房たちを連れて、少し離れた処に下がっていった。
「父上が占じた結果…まぁ、これも朧気ではあるがな、父上がおっしゃるには元凶は神とも言える。」
「神!?」
思わず大きな声を出すアタシを、兄上が宥める。
「まぁ待て、神とも言えるかもしれない。と言うだけだ。神にしては、まがまが過ぎる…それに人の怨念も感じられる。」
そう言って、兄上はいっそう、眉間の皺を深くした。
「神にも通じる程の力…。」
他に言葉が出ないアタシに、兄上が続ける。
「最初に言ったが、これははっきりとした結果ではない。」